フィナステリドの働き
AGA の治療薬であるフィナステリドというのはどういう 効果を持った医薬品なのか?2 番目の段階に注目してください。
男性ホルモンのテストステロン が酵素と結びついて悪玉ホル モンのジヒドロテストステロンというものに変わる。 この段階にフィナステリドは影響を与えます。
この二つを見比べてみてください。
左側が男性ホルモンテストステロンの分子構造。 右側がフィナステリドの分子構造です。
似てますよね? すごく似てるんですよ。だからもともとテストステロンと結合するは ずだった、「悪 玉ホルモンを作る元になる酵素」が、間違えてフィ ナステリドと結合しちゃうんです。
フィナステリ ドと結合されてできた物質っていうのは、悪さをせずに体外に排出されますので、特に問題はありません。
こうして悪玉ホルモンを作り出す原因になる酵素がいなくなるの で、悪玉ホルモンジヒドロテスト ステロンが作られなくなるということです。 これがフィナステリドの働きです。
フィナステリドの歴史
ちなみにフィナステリドというのは、内服薬・飲み薬です。 元々は前立腺肥大症とか前立腺癌の 治療薬として作られたものな んですが、その後の研究で「AGA の治療に役立つ」っていうこと が 分かって、転用されたんです。
そして、それが商品化されたのが、 皮膚科などで処方される医薬品です。
1997 年にアメリカで承認されて、日本では 2005 年の 12 月から AGA 治療薬として認可されて います。
そして現在では世界の60カ国以上で、AGA 治療の主成分として お医者さんが使っているのが、 このフィナステリドという成分です。 現在ではジェネリック医薬品もたくさんの種類が販売されてい ます。
フィナステリドは塗っても効果はある?
ただ、基本的にこれらはすべて飲み薬・内服薬です。塗り薬とかシャ ンプーに「フィナステリドが配合されてますよ」っていう商品もあ るんですが、これはあまり効果がないと思います。
特に、シャンプーはもう絶対に効果がないです。塗り薬については、 一部の国で臨床試験が行 われて「効果があった」っていう報告も あるんですが、フィナステリドの先ほどの働きから考えても、内服 薬の方が確実に効果は高いと思います。
そもそも塗り薬で効くなら、フィナステリドが内 服薬から AGA 治療 に転用される時に、塗り薬として販売されてもいいじゃないですか。
実際、ミノキシジルはそれと同じ経緯で内服薬だったものが、外 用薬として薄毛治療に転用されてるんです。
フィナステリドに代わる新成分デュタステリド
ちなみにフィナステリドと非常によく似た成分で「デュタステリド」 というものがあります。
デュタステリドは 2016 年に日本で販売が開始された新しい薄毛 治療の成分です。 その働きもフィナステリドと非常によく似ています。
先ほどの説明では、「酵素がテストステロンと間違えてフィナステリドと結合してしまう」という話を しましたが、デュタステリドも全く 同じ働きです。
ただ実その酵素には「1 型」と「2 型」っていう 2 種類があって、 フィナステリドは 2 型にしかその 効果を発揮しないんです。 でもデュタステリドは、その 1 型にも 2 型にも両方に効果がある成分です。
「じゃあデュタステリドの方がいいじゃん!」と思うかもしれないん ですけど、この 1 型と 2 型ってい うのは、実は 2 型が圧倒的に薄毛の原因として多くを占めてるんです。
AGA において 1 型の酵素っていうのは「特異的に発現するもの」であって、そこまで多くはないんです。
それよりも注目するべきは「2 型の酵素を抑制する力」なんですけど、これが「フィナステリドの 3 倍強い」と言われてます。
だからまあ平たく言ってしまえば、デュタステリドは「フィナステリ ドをパワーアップさせたもの」っていう感じになるんですが、臨床試験の結果を見ると「3 倍」っていうほどでもないんですよ。
その臨床試験というのは「直径 2.54cm の(頭皮の)円の中にあ る太さが 60 マイクロメートル以 上の髪の毛の増加数」これを 24 週間(約半年間)かけて計測したという臨床試験です。
フィナステリドとデュタステリドを比較した試験なんですけど、 ・フィナステリド→ 36.3 本増加
・デュタステリド→ 46.0 本増加 確かにデュタステリドの方が結構増えてはいるんですけど「3 倍 か?」って言われると微妙ですよね。
フィナ or デュタどっちがいい?
このチャンネルでは基本的にデュタステリドよりもフィナステリドを 推奨しています。理由は二つ あります。
一つ目の理由は、価格が高いことです。まだ実用化されて日が浅 い新しい成分なの で、フィナステリドと比べてかなり価格が高いんですよ。
フィナステリド(デュタステリド)っていうの は、ミノキシジルと違っ てずっと使い続けなければいけないものです。
もう一つの理由は、運用期間が短いということです。日本国内だ けで見てもフィナステリドはもう 15 年(世界では 20 年)使われていますが、デュタステリドについてはまだ 3 年足らずです。
「継続して使い続けることで何らかの副作用が発症する」というこ とが発覚した場合、怖いじゃな いですか。
極端な話、4 年目から発症するような副作用があった場合、日本で使ってる人達って い うのは長くて 3 年目ですから、まだ気付けないわけですよ。
そんなことが起こる可能性はほぼ無いと思うんですけど、万が一 を考えてフィナステリドの方が、 運用期間が長い分、安心感があるんじゃないかなと僕は思ってます。
ただ「デュタステリドは使わない方がいい」言っているわけでは ないです。診療ガイドラインでも A判定ですから効果のある成分 だと思います。
「フィナステリドを半年とか 1 年とか使い続けたけれども効果が出 ない」っていう方は、デュタステ リドに切り替える。これはアリだと思います。
実際に臨床試験の結果でも、「フィナステリドで効果が出なかった人たちに効果が出た」という結 果もあります。
だからまずは、ある程度の安全性と効果が保証されていて、価格 が安いフィナステリドを使うの がいいと思います。
そしてそれを継続して使ってみたけど「なんだか結果が出ないな」 「効果が 現れないな」という場合に、デュタステリドに切り替える。 このやり方をお勧めします。
